2024年4月6日土曜日

へどろから見た持続可能な世界ー咀しゃく

いまはテレビ、新聞、また折込みチラシでも、健康食品の広告がすごいです。「いま注文すれば○○円のところが△△円」と煽り立てるような宣伝文句が踊っています。そんな中、小林製薬の「紅麴」サプリメントが世間を大きく騒がせています。


健康食品といっても、その機能を商品に表示することが国から認められた「保険機能食品」と、「いわゆる健康食品」に大きく分けられるようです。そして前者も消費者庁長官の許可を受けた「特定保健用食品(トクホ)」と、国の定めた栄養基準を満たしておれば届出・許可が不要の「栄養機能食品」、安全性と機能性に関する情報を国に届けておれば審査不要の「機能性表示食品」の3つに分類されるようです。つまりトクホ以外は国の「お墨付き」があるとはいえないものなのです。小林製薬の「紅麴コレステヘルプ」は機能性表示食品ですが、事業者のハードルはかなり低く、生産企業のほとんどは資本金1億円未満の中小企業で、倒産や廃業も多いようです。


クスリは摂取量が重要ですが、サプリでも成分が濃縮したものを日常的に摂取すれば、普通の食品に比べ身体への影響は大きいと考えられます。よくよく考えて購入した方がよさそうです。

それと病気を治すのは本来、クスリではなく、身体が持つ「自然治癒力」であり、大切なのはそれを高める食べ物です。食べ物をおいしくアレンジし、楽しい雰囲気のもとによく噛んで食べれば、それが「最高の健康食品」なのです。


嚙むということは動物にとって、食べ物を摂取するのに欠かせない行為です。噛めば噛むほど人間では1.11.5リットルもの唾液が出て、消化を助けてくれるといいます。唾液には病気を治す働きや殺菌・解毒作用もあり、しかもよく噛むと耳下腺からインシュリンが分泌され、糖尿病の予防にもなるといいます。少量の食べ物で満足感も得られ、健康体を維持しやすくなります。噛むことはまた脳への刺激を高め、子供の場合は学校の成績に影響し、高齢者の場合はボケ封じになるそうです。


いまは食べ物がどんどん軟らかくなり、それと噛まなくてもよいサプリメント類が増え、噛むことがおろそかになっています。それは人間の退化を意味します。




いまは食べ物がどんどん軟らかくなり、それと噛まなくてもよいサプリメント類が増え、噛むことがおろそかになっています。それは人間の退化を意味します。

2024年3月7日木曜日

へどろから見た持続可能な世界ー花粉症

 花粉症の季節になりました。先日、テレビを見ていると、政府は花粉症対策としてスギ人工林の2割ほどを10年間で伐採し、跡地に無花粉、少花粉のスギ苗やスギ以外の木を植え、30年後に花粉発生量の半減を目指していると報道していました。花粉症対策のため、そこまでやるのかとびっくりさせられました。


 実を言うと私も15年ほど前までは花粉症がひどく、毎年いまごろは眼や鼻、喉のアレルギー症状に苦しめられていました。しかしいつの頃からかすっかり完治し、外出時に手放せなかったマスクも、いまは忘れることがほとんどです。一体何をしたかと考えるのですが、「エコの環」の野菜を多く食べるようになったこと、食事で無精白のもの(玄米、全粒粉のパン、自然塩など)、発酵食品を多く摂ったり、肉をあまり食べないようにしたことぐらいしか思いつきません。


前に免疫細胞には外敵を攻撃する役目のものと、これにブレーキをかける役目のTレグ(大阪大の坂口教授が発見)があり、腸内細菌のバランスが欠けるとTレグが不足して免疫細胞の暴走を許し、アレルギーにつながり易いことをお伝えしました。個人的には食事により腸内環境が改善され、Tレグを生み易い体質に変わったのではと考えています。


ある医師の話によると、インドネシアで感染症の調査を行っていたとき、現地の子供たちはウンチの流れる川で平気で遊んでおり、何度も注意したそうですが、よく観察してみると、誰もアトピーやぜん息などのアレルギー疾患にかかっておらず、日本の子供たちよりずっと元気なことに気付いたそうです。一方、北米に住むアーミッシュというドイツ系移民の宗教集団は、農耕や牧畜で自給自足の生活を営んでいるそうですが、アレルギー疾患が極端に少なく、その理由として幼少期から家畜と触れあう生活をしており、Tレグの多い体質であることが考えられるそうです。


私たちの口腔や皮膚、大腸などには膨大な数の常在菌が棲んでおり、好むと好まざるとに関わらず仲良く付き合っていかねばなりません。しかし清潔な生活を志向するあまり、抗菌剤や消毒液、石鹸などを多用するとこうした常在菌のバランスを崩し、免疫細胞の働きにも多大な影響を及ぼしかねません。花粉症の患者の割合も、花粉がよく飛ぶ山村より都会の方が多いそうです。スギ伐採もいいですが、Tレグを増やす研究にお金を使った方が意義があり、安上がりだと思うのですが。


2024年2月16日金曜日

へどろから見た持続可能な世界ー一物全体

栄養学でよく「一物全体」という言葉が使われます。もともとは仏教の言葉のようですが、動物にしろ、植物にしろ、生き物は丸ごと全体で完結し、バランスが取れており、穀物なら精白しないで、野菜なら皮をむかずに、魚なら小魚を丸ごと食べることを勧めるための言葉です。

昔、学校で栄養の勉強をしたとき、先生から「食べ物は捨てる方に栄養分が多い」と教えられましたが、食事は一物全体を意識して食べることを、教えられたのだと思います。

私たちは大根、にんじんなどはできるだけ葉っぱ付きでお渡ししています。大根や人参の葉っぱは捨てられがちですが、大根の場合、下表を見て分かるように栄養素は葉っぱの方に多く、根にほとんど含まれない栄養素も豊富で、葉っぱもぜひ食べて頂きたいからです。

捨てる部分に多い栄養素(100グラム中)

大根やにんじんの皮も、当然のようにむいて捨てられます。しかし大根の場合、食物繊維やβカロチン、ビタミンK、葉酸、ビタミンC、カリウム、カルシウム、鉄などは皮の方に多く、とくに食物繊維、ビタミンCは皮に集中しているそうです。また、大根に含まれるジアスターゼとかリパーゼといった消化酵素も、皮の方に多いそうです。

 化学肥料、畜糞、農薬などを使って栽培された大根やにんじんなら、皮をむいた方がよいといえますが、私たちは生ごみ発酵肥料だけで野菜を育てています。ぜひ、水で洗うだけで皮ごと食べて頂きたいと思います。




2024年1月12日金曜日

へどろから見た持続可能な世界ー不耕起栽培

新年明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願い致します。


さて、昨年はロシアとウクライナの戦争が膠着状態に陥る中、中東で新たな戦争が勃発し、連日のおぞましいュースに暗い気持ちになる年でした。

一方で昨年は観測史上最も暑い年でもありました。10月末までの平均気温は産業革命前から1.4℃も上昇し、パリ協定2020開始)の目標1.5℃を突破しかねない暑さとなりました。大規模な山火事など「温暖化」から「沸騰化」に向かいつつあるような兆候も多発し、この先一体どうなるのか不安な気持ちにもなる年でした。地球の限界が先か、私たちの生活転換が先か、ここ10年の行動が問われるところにきています。


私たちは生ごみの発酵肥料で野菜を育てています。これは空気中のCO2を吸収して成長した作物の可食部以外を土に還すことであり、温暖化対策でもあります。実際、畑の土は年々黒くなっているように見受けられます。一方で農業は耕すことで土壌中の炭素をCO2として放出する巨大産業でもあります。農業がこれまでに放出したCO2は、化石燃料が放出した量の2倍にもなるといわれます。私たちの畑でも土を耕せばCO2が放出され、折角の温暖化対策が無駄になるのです。


いま世界では不耕起栽培(耕さない農業)が注目されています。畑を耕すと土壌環境を壊し、生物多様性や土の健康が損なわれ、CO2を発生させるからです。国連食糧農業機関FAOも劣化した生態系や土壌を再生し、食糧生産を改善する持続可能な農法として推奨しています。


この不耕起栽培を提唱したのは日本人の農業家、福岡正信氏です。いま世界では12.5%の農地で不耕起栽培が導入されているそうです。しかし日本ではまだ0.01%以下だといいます。彼の放任的農法は哲学的で、几帳面な日本人には受け入れ難いものであったようです。しかし温暖化が加速する中、私たちも勉強を始め、できることから取り組んでいきたいと考えています。


2023年12月15日金曜日

へどろから見た持続可能な世界ー体温

 毎日、具だくさんみそ汁(というよりも具だらけみそ汁)を食べています1350グラム以上の野菜を摂取したいからです。具には葉物を必ず入れますが、熱湯に入れると葉っぱがみるみる青みを増すのが分かります。萎れかけたものはそれが顕著です。いつもそれを面白く思っていましたが、これは葉っぱの中の酵素が活性化されるからだそうです。

 あらゆる生き物の活動には酵素の働きが必要です。酵素の働きは温度に大きく依存していて、図はカタラーゼという酵素の活性を示しています。温度の上昇とともに活性は急速に上昇するのが分かります。葉物が青みを増すのは熱で酵素が活性化され、葉っぱが元気になるからです。しかし図では40℃を過ぎると失活します。酵素はたんぱく質で出来ており、たんぱく質は4050℃で熱変性するからです。


 免疫システムも正常に働くのは、血流がよくなる体温が36.537.1℃のときだといいます。つまり健康で元気に過ごすには体温は高い方がいい、身体は温めた方がいいということになります。病気になると熱が出ます。これは身体が体温を上げて代謝(酵素が関わる化学変化)を高め、病気を治そうとするからです。だから解熱剤で体温を下げるのはよくないといいます。

 現代人には平熱が35℃台という人が多いそうです。低体温の原因の多くは筋肉量の低下だといわれます。筋肉は熱を作る役割も担っているからです。身体の筋肉の約7割は下半身にあり、体温を上げるにはウォーキングやジョギング、スクワットなどの運動で下半身を鍛えることが大切です。

 次に入浴ですが、シャワーでなく40℃前後のお湯に毎日10分程度浸かることが大切だそうです。それだけで体温は1℃上昇するといいます

 ストレスの解消も重要です。ストレスは免疫細胞の働きに強く関係しているからですが、強いストレスは低体温を引き起こすそうです。作り笑いでも笑うことが大切だといいます。

 カイロを貼ったり厚着をして物理的に身体を温めるのもよいそうです。とくに下半身を温めると、足には血液を心臓に送り返すポンプのような役割の筋肉があるので、血流がよくなるそうです。私自身は年中腹巻をしています。

 良い食事をしっかり摂ることも大切だそうです。胃腸が働くことで体温が上昇するからです。



2023年11月25日土曜日

へどろから見た持続可能な世界ー自然治癒力

 年齢がら、学生時代や会社員時代の仲間の訃報をよく聞くようになりました。がんが多いです。また入院治療中という連絡にもがんが多いです。親しかった友からの療養中との連絡には、つい「野菜を多く食べろ」とおせっかいな手紙を出したりしますが、素直に聞いてもらえたことはありません。切羽詰まった状態の中、かえって反発させることになるのかも知れません。


 しかしがんは「食原病」とも言われます。だからまず食事の内容を改める必要があるのです。抗がん剤の世界的権威の前田教授も、「日ごろから野菜をしっかり食べておれば、がんの予防・抑止に有効と言いきれる」とはっきり述べておられます。それとどんな病気やケガも、治すのはクスリではなく身体に備わった「自然治癒力」(免疫力も含まれる)なのです。ある高名なお医者さんの話によると、がんが全身に転移した末期的青年に「身体を温めなさい」と言ったところ、青年は一日8時間ほど風呂に浸かって身体を温め、とうとう自力で末期がんを治してしまったそうです。自然治癒力とはそれほどの力があり、がんの三大治療法はかえってその治癒力を削いでしまうのです。You are what you eat.(あなたは食べたもので出来ている)。食事が一番のクスリなのです。


 いまから150年ほど前、フランスのパスツールは「病気の原因は体内に入った菌だ。菌さえ殺せば病気は治る」と唱え、近代医学の礎を作りました。このパスツールの論に対し同時代の学者の中には異議を唱える人たちもいて、ペッテンコーヘルという学者は「菌にやられてしまう身体に問題があるのだ」と主張し、学会で実際にコレラ菌を飲んで見せたそうです。出席した人々は彼の無謀な行動に仰天したそうですが、彼は熱が出ることもなく、少し下痢をしただけでピンピンしていたそうです。自然治癒力を信じた人は当時からいたのですね。自然治癒力をつけるには野菜が有効です。

 

    1350グラム以上の野菜を務めて食べましょう。



2023年10月31日火曜日

へどろから見た持続可能な世界ーTレグ

 コロナ禍では免疫力が注目されました。病院や老人ホームなどでクラスターが発生しても、発症しない人が10人中23人は必ずいて、そういう人は強い免疫力、疫(病気)を免れる力を持っているのです。この免疫力に腸が深く関わっているといわれます。

 腸は食べ物だけでなく、それと一緒に病原菌やウィルスが入り込んでくる危険な場所で、体内の「免疫細胞」(外敵と戦う戦士)の7割は腸壁の内側に存在していて、同じく腸内に100兆個以上棲む「腸内細菌」と密に連絡を取り合いながら、私たちの身体を守っているといわれます。ところがこうした免疫細胞が、本来、攻撃する必要のないものまで攻撃してしまう異変が近年、現代人の間に急増し、さまざまな「アレルギー」や自分自身の細胞を敵として傷つけてしまう「自己免疫疾患」を引き起こしているといわれます。

これに対するある研究によると、命に係わるほど重症のアレルギー患者と、ある自己免疫疾患を患った人の便を調べたところ、どちらもクロストリジウム菌という腸内細菌が、健康な人に比べ著しく少ないことが分かったといいます。

一方、これまで免疫細胞といえば外敵を攻撃するだけが役目と思われてきましたが、「Tレグ」というブレーキ役の免疫細胞もあることを大阪大の坂口教授が発見されました。そしてこのTレグが身体のあちこちで過剰に活性化し、暴走している免疫細胞をなだめ、アレルギーや自己免疫疾患を抑える働きをしていることが分かってきました。そしてTレグはクロストリジウム菌の働きによって生まれることも分かってきました。

クロストリジウム菌は腸内の「食物繊維」をエサとして食べ、「酪酸」という物質を作りますが、それが腸壁を通って内側の免疫細胞に受け取られると、Tレグに変身するのだそうです。つまり腸内細菌にクロストリジウム菌が少ない前述の患者さんたちは、腸内でTレグを生み出す力が弱くなっていたと云えるのです。



日本人の腸内細菌は、欧米人に比べると酪酸を作り出す潜在能力が高いそうです。しかし食生活の欧米化と食物繊維の摂取量の減少など、急激な食の変化に対応しきれず、「免疫の暴走」を引き起こすようになったのではと考えられています。


 食物繊維の多い野菜を1350グラム以上、務めて食べましょう。