2017年6月8日木曜日

トマトの発芽

 2週間ほど前にまいたトマトのタネが見事に発芽しました。タネをまけば発芽するだろうと言われればそれまでですが、実はこのタネは固定種のタネで育てたトマトから私が採取したもので、なんとなくフニャフニャと柔らかい感じのタネで、こんなものが発芽するだろうかと不安視していただけに、感動が大きいのです。これからの成長を楽しみに見守りたいと思っています。
発芽したトマトのタネ


 タネには固定種のタネとF1のタネとがあります。固定種のタネとはある地域で何世代にもわたって育てられ、自家採取を繰り返すことで、その土地の環境に適応した遺伝的に安定したタネをいいます。
 一方、F1のタネとは「一代雑種」、「交配種」と呼ばれる一代限りの雑種(ハイブリッド)で、系統が遠く離れたタネを人工的に掛け合わせると、その雑種の一代目には「雑種強勢」という力が働いて(メンデルの法則)、生育が早まったり収量が増大することから、こうした原理を応用して人工的に作られたものです。ただタネを取っても親と同じ姿かたちの野菜は出来ず、メチャクチャな異品種になるため、タネは毎回種苗会社から買う必要があります。いま世の中に流通している野菜や花のタネはほとんどがこのF1のタネです。

 なぜこうしたタネが出回るようになったかの第一の理由は、野菜にも工業製品のような均質性が求められるようになったからです。大根でも太さ8cm、長さ38cmというように大きさが揃っていると箱に詰めやすく、運搬コストが下がり、売値も1本100円と同一価格に決めやすいのです。つまり農産物にも工業製品と同様、大量生産・大量消費、経済効率最優先の仕組みが必要になってきたからです。
 「三浦大根」という有名な大根も、いまは全部がF1だそうです。固定種なら収穫に4ヶ月かかり、大きさはバラバラ、収穫時期もまちまちなのに対し、F1なら2ヶ月半で大きさの揃った大根が一斉に収穫できるからです。これでは固定種の大根がいかにきめが細かいだとか、煮崩れしない、煮るほど甘みが増すといっても太刀打ちできないのです。また、外食産業も機械調理に適した、味よりも大きさが均一な野菜を求めるようになっているからです。

 F1のタネの作り方は種苗メーカーの秘密(ブラックボックス)で、全く分からないのが現状だそうです。自然界のタネの間には生殖ができない「種の壁」というのがありますが、こうした壁を破ることも当然可能であり、こうした子孫を残せない野菜ばかりを食べていて、はたして私たち人類は大丈夫なのだろうかという疑問が沸いてきます。
 グルテン不耐症でも触れましたが、いまアメリカ、カナダで育てられている小麦は100%遺伝子組み換えのものです。その小麦のグルテンは自然界に存在するグルテンとは構造的に異なり、人によってはこうした小麦に対し身体が苛烈な拒絶反応を示すことがわかっているからです。

 私たちが進める「エコの環」は収益を追い求める農業ではありません。高齢者に生きがいを与え、地域の健康づくりに少しでもお役に立ちたいと願う農業です。そうしたことからできるだけ固定種のタネを買い求め、野菜作りを行っていますが、肝心のタネ取りがおろそかになっています。今回発芽したトマトが無事に果実をつけるように育ってくれれば、自信もつき、この土地に根差した固定種を育てる弾みになります。そうしたことからも成長を楽しみにしています。

野口 勲;”タネが危ない”、日本経済新聞出版社、2013

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